マイワールド

「やってみない?」

優菜の小さな声が、中栄の足を止めた。

「動物園の改良、
園長に相談してみない?」

優菜の声は少しだけ震えていた。

「あんたがあんなこと言ってたから……
あたしもいろいろ考えてみたの。

そしたら、あんたの言ってること、
間違ってないなぁって。

確かに、この動物園、人間のためだけにある。

動物達は閉じ込められてるだけだよ……。」

「だからって、広くすりゃいいって問題じゃねぇだろ?

俺は、こいつらを野性に返してやりたいんだ。」

「わかってるよ、そんなこと。

でも、動物園で育った子は、
野性なんかで生きていけないでしょ?

だったら最低限……やりたいの。

それに、動物園がいいものか悪いものかなんてあたしにはわからないし……。

ダメかな?」

優菜の問いに、中栄はしばらく答えることができなかった。

けれど、

「勝手にしろ。俺はしらねぇ。」

と、また突き放してしまった。

「ねぇ!」

開園前の動物園に、
優菜の声がこだました。


中栄はこぶしをにぎりしめてから、
優菜を睨んだ。

「おまえ、どこの物語のヒロイン?」

上から目線で、
捨てゼリフのように言った。


でも、優菜は諦めなかった。

「そっちこそ、どこの怠け者?

『ヒロイン』なんて呼ばれるのは大歓迎。

全然けなせてない。

むしろあたしのことほめたでしょ?」

優菜は瞬き一つしなかった。

「はぁ?

おまえ、バカか?

一人でやってろっつってんだよ。

なんで俺を巻き込むんだよ?」

中栄は歩き出した。

「あんたに協力してほしいの!

あたし、諦めないからね!」

「勝手にやってろ。」

中栄は、
孤独なライオンと気の強い人間を後にした。