――。
「おはよう。」
八時。
ようやく頭が回転してきた。
一時間もボーッとしていたのかと思うと、恐ろしくなった。
「彩音?
大丈夫?」
母が、洗いものをしながら私の顔をまじまじと見つめた。
「なんか……体おかしいのかな? 私。」
私は頭をかいて、椅子に座った。
「やっぱりねぇ。」
母が納得したような顔を見せた。
「え……?」
私は首を傾げた。
母は水を止め、
台所の台に体重をかけた。
「なんか、みんな同じこと言ってるんだよね。」
「『みんな』って……
お父さんとお兄ちゃん?」
「うん。
お母さんも、朝、変だったんだよね。
病気になったのかと思ったよ。」
「へぇ……。」
会話をしているうちに、
いつもどおりの頭に戻った。
それにしても、何なのだろう。
でも、家族全員がそうだと聞いて、
少し安心した。
「そういや、クリは?」
「いつもみたいに、朝お母さんを起こして、
外行っちゃったよ。
そういえば、帰ってくるの遅いね。」
その時、私はハッとした。
『いつも寝てたのに心臓だけはダッシュしてた』――。
『遠い所へ行く』――。
まさか――。
「ちょっと外行ってくる。」
私は早口でそう言い、
パジャマのまま外に出た。


