目的地に到着したのは、九時半だった。
大体、予定通りだ。
「あのねぇ!
キャバクラに行くんじゃないの!
美人でもブスでも、獣医さんは獣医さんなの!
どんな人が出ても、礼儀正しくやってよ!
じゃないと藤井先生に怒られるのは班長の私なんだから!」
私はどこかのお母さんのように怒鳴った。
「わぁってるよ。
男子はそんなにバカじゃない。」
「バスケ部なめんなよ。」
全く説得力のない二人の言葉に、
私は呆れてため息をついた。
カランカラン――。
「こんにちは。」
私は練習どおり元気よく挨拶をした。
「あ、職業体験の西中学校さんですよね?
どうぞ、こちらへ。」
出てきたのは、中年の男性だった。
胸には、『院長。明石(あかいし)』と書かれた名札をつけている。
首を傾げて目を合わせる男子二人の背中を、
私は思いきり叩いた。
この動物病院は、とても大きい。
何人もの獣医師が忙しそうに廊下を歩いている。
「入って。」
明石先生は院内の一番奥の部屋を開けてくれた。
「ありがとうございます。」
私達はきちんとお礼を言って入った。
そこで驚いた。
中では、タレントのように綺麗な女性が腰掛けていた。


