マイワールド

ボン――。

始まった。

「明ぁ!」

恵子は全身で応援している。


私は身動きが取れなかった。

恵子はもう私の腕を放しているが、
隣に恵子がいるというだけで、怖くて仕方がない。

そのせいで、試合の状況など、全く頭に入らなかった。


ボーン――。

どちらかが点を入れたようだ。

「きゃっ!

ネーヤア!

裕也が入れたよ!」

恵子は私の背中をバシバシ叩いた。

「やったぁっ!」

私は跳びはねて喜んだ。

この時は、本気で喜んだ。


今更だが、私はサッカーのルールを知らない。

体育の授業でも、サッカーを選択したことはない。

「行けぇ!

出るぞ出るぞ!

違う!

そうそう!

ナイスシュート!」

それに比べ、恵子はずいぶん詳しいようだ。


私は恵子を見ながら応援した。

「裕也ファイトぉ!」

さっきから、私はそれしか言っていない。

けれど、盛り上がった空気に誘導されるように、
次第に楽しめるようになってきた。


ルールを気にせずに叫んだ。

隣が恵子でも何でもいい。

「頑張れ!」

今の私にはそれしかない。


何点でもいい。

勝ちでも負けでもいい。

ナイスシュートでもナイスヘディングでも、何でもいい。

走ってほしい。

私のためじゃなくてもいいから、必死に走ってほしい。

「裕也行けぇ!」

お腹と喉が破れそうだった。でも、その快感がたまらなかった。