マイワールド

「おまたせ。」

後ろから担任の声がした。

「いえ。」

私は素っ気なく答えた。

担任は細い腕を伸ばし、相談室の鍵を開けた。

「どうぞ」

「あっ、はい。」

入った途端、私の心臓が大きな音で鳴りだした。

そこにいるのは、なぜか中栄未来。

とても現実だとは思えなかった。

「ちょっと話があるんだ。

時間もらってもいいかな。」

私は唖然とするしかなかった。

今、彼が何と言ったかもわからない。

「大丈夫?」

彼は心配そうに私を見た。

「あ、あ!

はい。

大丈夫です。

わ、私に話が……?」

やっとの思いで声が出たものの、体が固まって動かない。

「そうだよ。まず座って。」

「はい。」

担任は静かに部屋を出ていった。


二人になった途端、気まずい空気がただよいだした。


だが、そう思っていたのは私だけだったようだ。

彼は話を勝手に進めていく。

「今度の映画のあらすじなんだけど、読んでもらってもいいかな?

僕が脚本を書く予定になってるんだ。」

一枚の紙を渡された。


私の頭はパニック状態だ。

言いたいことがあるような気がするが、
それが何なのかもわからない。

何とか返事をして紙を受け取った。


だが、読むことが出来ない。

目では文字を追っていくが、全く頭に入らない。


みんなに嫌われてから性格ががらりと変わり、今は非社交的。

無理だ。

知っている人と話すのも難しい私が、
今日初めて会った人、ましてや有名人とまともに話せるわけがない。


破れてしまいそうな心臓を何とかすることにしか頭は回らない。