何の危険も伴うことの無いオリエンテーションのはずが、・・・ひとりあえて少し道を変えて見ただけだった。
歩きながら隣にいる人達は見えたし、道別れの道といっても一本の道が中央にのびた一本の大き木を左にかわすか右にかわすかで少しずつ仲間との距離が離れていった。
平坦な道を行く人々とは別に私はひとり険しい岩盤の連なる山を登りつめて狭い岩肌にしがみつくように登ってゆくと、
後少しで平らな穏やかな丘が見えた。
人々の笑い声や若い女性達、子供達の屈託の無い歌声までが聞こえてきた。
しかし私の足元の下には青い芝生は無く、紺碧の青い海面が見え、突然深い緑色に変わったりもする異様な景色となっていた。
海から吹く強い風に岩肌の突起を掴んで耐えていた。
後50㎝のところでこの難関が重くのしかかっている。こんなはずではなかった。
なぜ私ひとりがこんな目に。足元の岩をよく見て少し登る為のポイントを選び出し慎重に片足をかけ、腕は頃合の岩肌をしっかり掴んだ。
「こんなところで死ねるか 頑張るんだ よし、うまく進めた」視野には平らな草原の上をそよ風の吹く丘に人々の集う姿が目に一瞬入り額に沈んだ。
その時踏み掛けて崩れて、欠けた岩場は一塊の岩石となり零れ落ち、釣り人の頭を直撃した!!
その身体は海に弾き飛ばされ落ちて、落ちた屍海の箇所だけ赤くわずかに色付き始めている。大変な事をした。アクシデントだと思いながらも、生死の分からない絶体絶命の危機にそれを顧る余裕はある筈も無く逆戻りの着地点を捜すことより、他に助かる方法は無かった。
飛び降りてなだらかな斜面にうまく着地が出来たなら身体が斜面を滑ることなく海に落ちなければ助かることが出来る。
もし、砂利肌に足をとられれば掴むものなど無い場所で50m下の海かもしくは岩場に叩き付けられる。
運を天に任せられるか否か、私は不思議と覚悟を決め冷静に思考計算をするように努めた。
その結果は、皮肉にも必ず落ちるところまで落ちることだと確信した。しがみ付いたまま耐えて飛ぶに飛べず、息は早く苦しくなり、岩肌で身体を支え続けたがもう限界だ。消耗により、飛ぶ体力と気力もつきかけた時もう一人同じ姿の友を見た。