――あれから半年。




すっかりジャケットのことなど頭の中には無く、

平平凡凡、普通の人生を送っていた。




「ただーいま、っと……?」




目の前に置かれた、白い小さな紙切れ。

その上に書かれた、滲んだ文字。



『買い物が終わるまでに、部屋の片づけをして置くこと』



明らかに母の筆跡で書かれたその文字は、

一気に僕の世界を変えることになる。





ともあれ、結局は片付けをしなくてはいけない。

メイドでも執事でも、雇んねぇかなー……とか思いつつも、

ランドセルを置いて仕事を始める。




――――面倒なことこの上ない。




そう思い、ゴロンとベッドの上にダイヴする。



「……あれ? …これ……」



半年前に引出しにしまったはずの、

あのジャケット。



「母上、取っておいたのか」



対して気にもせず、うつ伏せに寝転がる。

あー……眠…。