……え? 一瞬、自分のことだなんて気付かなかった。 でも、その女の瞳は明らかにオレに向けられている。 明るすぎない茶色で、真っ直ぐ伸びたセミロングの髪。 美人系の顔立ちで、年はきっとオレより少し上くらいの大学生だと思う。 こんな朝早くから、ナンパか? しかもこんな雪の中、明らかに受験生相手に何考えてんだよ。 ここは何か言われる前に先手を打っておくべきだな。 ほんの少しの間にそんなことまで考えて。 「あの、悪いけどオレ、そんな気ないんで」 視線を反らしながら、無愛想気味にそう言った。