たくさんの人ごみを、猛スピードでくぐり抜けて。
「ストーーップ!!」
ある程度走ったところでそう言うと、息を切らした彼女が恨めしそうな表情でオレを見上げる。
「疾風速い~。急にびっくりするじゃん」
「ははっ。和華ちゃんがいつまでも笑ってるから、仕返し」
「もう~!疾風のイジワルっ!!」
頬を膨らませて拗ねる彼女がまた可愛くて。
「ごめんごめん」
そう笑いながら、華奢な肩を抱いて引き寄せる。
そしてそのまま駅の反対側に行こうと階段に足を踏み出した時……
「……あれ?」
何か冷たい物が顔に当たった気がして、オレはふっと足を止めた。

