キミイロ。【LOVEドロップス参加作品】



ドキドキしてることには気付かないフリをした。

だってオレ受験生だし。
そんなことにうつつを抜かしてる場合じゃない。


そう考えているうちに、徐行運転解除のアナウンスが耳に届いた。


「ほらね、言った通りでしょ?」

オレの顔を覗き込むように見上げる彼女に、またしても心臓が大きく跳ね上がる。


それと同時にホームに入って来た電車。
ようやく長い列が少しだけ動き、オレもその流れに従った。


それを見た彼女は、ホッとしたような表情で言う。


「じゃあ、あたしそろそろ行くね。
ね、ちなみにどこ受けるの?」

「あ、S大っす……。
ここから電車で30分ちょっとの所にある」


大学の方向を指差すと、彼女もそっちに目を向けた。

「……ふーん、そっか。
受験票は?ちゃんと持った?」


一瞬空いた間が気になったけど、その後で母親よりも母親らしいことを言うから、オレは鞄の中から受験票を取り出して見せる。


「オッケーっす!!」

ぐっと拳を握り締め、ガッツポーズを作る。


「よしっ!頑張れっ!!」


その時の彼女の笑顔は、今日見た中でも最高の笑顔で。

最後にボソッと「また会えるといいね」と呟いて、同じようにガッツポーズをしてから背を向けた彼女の後ろ姿を、オレは小さくなるまで見送った。