「同じの2つあっても仕方ないし。そう思ってたらたまたま寒そうなキミの姿が見えて。 だからさ、もらってよそれ」 「いや、でも……」 初対面の、しかも通りすがりの人にそんなこと言われても正直困る。 それに、親切に見せかけて、もしかしたら後で金払えとか。 実は貴重な毛を使った超高級品で、とか。 そうだ。 こんなキレイな人が、オレみたいなガキに話し掛けてくるはずな…… 「……あははっ!」 「……へっ?」 軽快な声に顔を上げると、彼女が目尻に涙を浮かべながら腹を抱えて笑っていた。