「――え?」
何が起きたか分からなくて、その場で固まってしまう。
だって、いきなり彼女が近づいてきて。
それから、それから……。
オレはそっと手を首元に持っていく。
さっきまで、冷たい風を受けて冷え切っていたそこには、ふわふわの白いマフラーが巻かれていた。
「これ……」
驚いて彼女へと視線を戻すと、にっこりと穏やかな笑みを浮かべる。
「それ、あげるよ。
あたし、なくしたと思って新しいの買ったんだけどさ、実はバイト先に置き忘れてたみたいで」
そう言いながら、自分の首に巻いてある同じようなマフラーを指差した。

