「韻……ですか?」
知花は明らかに、私の言っている事の意味が分かっていない様子だった。
「そう。
通常、韻というのは漢詩等の語尾に同じ母音の語句を使って調子を整えたり、余韻を残す技法なんだけど…
その韻による効果を、催眠効果が発揮される程に研ぎ澄ました人がいるの。
いえ今は、いたと言った方が正確ね」
「い、意味がよく分からないんですけど、つまり文章で催眠術にかけるって事ですか?」
知花は半信半疑で、半ば憶測で言葉を口にした。
「そういう事」
「そんな馬鹿な…」
知花の反応もよく分かる。いきなりこんな事を言われても、信じられる筈がない。
「気持ちは分かるけど、本当の事なのよ」
呑気にカフェオレを飲んでいた愛美が、急に横から口を挟んだ。
「だって、最初に起きた踏切り連続飛び込み自殺の時…
私も電車に飛び込んだ1人だから」
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