食欲も無く、ホットココアを飲んだだけで家を出た。
そうか、よく考えてみれば今日から5月か…
隣家の庭先で元気に鯉のぼりが泳いでいるが、私の心は全く晴れない。
私の自宅から県立中井川高校までは、徒歩で20分余り。いつもはこのコンビニの前で、礼が待っていて――
約束の場所に一番早く来るのは、決まって礼だった。
そこにいない礼の姿を思い出し、前が見えない程の涙が溢れてきた。
まだ1週間も経っていないんだ…
「知花…」
突然肩を抱かれ振り向くと、沙菜は私がが思っていたよりも明るい表情で、すぐ目の前を指差した。
「ここにも、学校にも、3人でよく行ったあの場所にも礼はいる…
私達が忘れない限り、ずっと生き続ける。だから私達は、礼の分も頑張って生きないとね」
「…――うん」
沙菜らしくない意思表示に、私は決意の強さを感じた。
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