断罪者


思わず私は、インターホンの前で俯いた。


この様子では、とてもではないが携帯電話を貸してくれそうな雰囲気ではない。

でも、今のところ間違いなく自殺ではないと言い切れる被害者は、前原以外に知らなかった。


諦め切れず門の前に立っていると、建物の横から前原によく似た若い男性が出てきた。

そして、私の方へとゆっくり歩いて来た。

「僕も、弟は絶対に自殺ではないと思っているんだ。

前日弟は、亡くなった礼さんの為にも強く生きるんだと、僕に熱く語った…
あの弟が、翌日自殺するなんて事は、僕には信じられない!!」

そう言って門越しに、台の携帯電話を差し出した。


「こ、これ…」

「君の話は、家中に響いていたよ。弟の携帯電話…持って行って良い。

その代わり、絶対に真相を突き止めて欲しい――!!」


私は前原の兄から、黒い2つ折りの携帯電話を受け取った。


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