再び走り出した私は、5分足らずで団地の入口に辿り着いた。そしてそこに立ててある、団地内の案内板を見上げた。
「前原、前原……」
名前を探して看板を端から調べていくと、入口から4本目の左右に伸びる通りに、前原という名前を見付けた。
私は直ぐに入口の坂道を、自転車を押して高台になっている団地へと入って行った。
坂道を登り切るとそこは平坦な土地で、私は再び自転車に乗った。
1本、2本、3本…
団地中央のメインストリートを、道を数えながら進んで行き、4本目で左に曲がった。
この5件目の薄茶色の外壁の住宅が、前原の自宅だ。
私は自転車を停めると、迷わず門柱に設置されたチャイムを鳴らした。
「はい」
年配の女性の声で、直ぐに返答があった。
「あの…私、前原君のクラスメイトの栗原と申します」
「はあ?
クラスメイトの栗原さんが、うちに何か御用ですか?」
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