2度目のチャイムを鳴らすと、低く沈んだ声で応答があった。
「どちら様ですか?」
「あ、栗原です…栗原 知花です」
私が名乗ると、応答した母親の声のトーンが少し高くなった。
「ああ、知花ちゃん。玄関を開けるからどうぞ」
私はオートロックの自動ドアが開くとエレベーターに乗り、13階の部屋に向かった。
玄関のチャイムを鳴らすと中で開錠する音がし、ゆっくりと扉が開いた。
礼の母親は笑顔を作ってはいたが、目の下にくまが出来、憔悴し切った表情をしていた。
礼は独りっ子であった為、両親がどれ程落胆したのかは、私にも容易に推測出来た。
「それで…今日は、一体何のご用?」
「はい、礼さんの携帯電話を見せて頂けないかと思いまして…」
礼の母親は怪訝そうな表情をしたが、理由も聞かず奥に入って行った。
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