「知花…」

私は立ち上がった沙菜の肩をぐっと抱き、車に乗り込んで行く礼を見送った。

喪服を着た人達の列が送迎用のマイクロバスに飲み込まれ、焦げ臭い排気ガスを残して走り去っても、私はまだ信じられずにいた。


葬儀が終わり引き潮の様に去っていく人々の中、私と沙菜は動けないでいた。

全ての人がいなくなり、葬儀屋の担当者に声を掛けられるまで、私達は呆然と立ち尽くしていた。



信じられなかった。

礼に彼氏が出来て、以前より一緒にいる時間は少なくなってはいたが、自殺す程思い詰めていたなら、一言でも相談してくれた筈だ。

きっと、沙菜も同じ気持ちの筈だ。


裏切られた様で哀しい。あれ程、固い絆で結ばれていた筈なのに。


私達はお互いに言葉を交わす事もなく、並んで葬儀場を後にした。


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