兄は私と同様に、そのメールに危険を感じたらしく、急いで携帯電話のアドレスを捲り始めた。
そして、その内の1件を選択すると電話をかけた。
私はその様子をずっと見ていたが、兄の電話した相手は全く応答する気配がない。
兄は焦った様子で電話を切ると、もう一度電話をかけた。
「あ、もしもし里川ですが…」
電話は繋がったが、その様子から本人ではなく、家族の様だった。
兄の表情が突然険しくなり、口調に緊張感が漂った。
「一昨日ですか…
正樹君が、飛び下り自殺だなんて…」
飛び下り自殺!?
その言葉に私の鼓動が速くなり、手の平に汗が滲んできた。
兄は電話を切ると、一度俯いて目を閉じた後で、ゆっくりと私の方を向いた。
「……よく一緒にあの古本屋に行っていた奴が、飛び下り自殺したって」
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