「あのね、三春駅の前にあった古本屋があるでしょ。最近あそこから、メールが届かなかったかな…と思って」
兄はテレビを見ながら、携帯電話を持ち上げ左右に揺らした。
「ほれ、1ヵ月前に携帯電話を会社ごと変えたからアドレスも変わったし、何も届いてないぞ」
「そうなんだ」
私は兄が巻き込まれていない事に安堵したが、同時に手掛かりを失った事に失望した。
「ねえ、友達にあの古本屋に行ってた人とか知らない?」
「ああん?
何だよ、何かあるのか?」
兄は、踏切連続飛び込み自殺もケータイ小説作家連続殺人事件の事も、あの店主の仕業だという事を知っている。
「あの古本屋の店主が死ぬ間際、名簿に載っている利用者にメールを送信したの。
まだ何も起きてないけど、絶対そのメールに何かあると思うんだ」
私の話を聞いて、兄は起き上がって振り向いた。
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