ゴムの焦げる臭いがした。
トラックは大きく車線をまたいで停まり、白と黒灰色の煙を吐いていた。
アスファルトに横たわる沙菜は、人形の様に動かない。
私の足は力を失い、沙菜の元に駆け寄る事も出来ず、その場に膝から崩れ落ちた。
もう声が出ない。
車道の車は全て停まり、周囲に人が増えてくる。
まるで見せ物の様な沙菜の姿を見て、私は這う様にして車道に下り、沙菜に近付いた。
見ないで…
赤く染まったガードレールは、沙菜がぶつかった箇所だけが、真っ白に変わっていた。
やっとの事で沙菜に辿り着いた私の目から、追い付いた様に涙が溢れてきた。
私は精一杯の声で、力を振り絞り叫んだ。
「救急車を…
誰か救急車を呼んで下さい!!」
震える声が、事態の深刻さを物語っていた。
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