断罪者


あ――…


その瞬間、私の手から沙菜の腕がスルリと抜けた。


ほんの瞬き程の時間だったにも関わらず、私には全てがハッキリとスローモーションで見えた。


私に全体重をかけられた沙菜の身体は一瞬後方に仰け反ったものの、絡み付く腕を強引に引き抜いた。

車道に飛び出す沙菜。そこに緑色のランプを3つ点灯させたトラックが、乾いたブレーキ音を響かせなが襲いかかってきた。


まるで木の葉の様に宙に舞う、沙菜の茶色い鞄。

急バンドルをきったトラックの銀色に鈍く輝くバンパーの端が、沙菜の脇腹が引っ掛かる――



アスファルトを、木偶の様に転がる沙の身体は、5メートル程先の薄汚れたガードレールに激突し、反動で車道に飛ばされ…

そして、そこでようやく止まった。



「いやあぁぁぁ――!!」


今まで出した事もない程の声が、私から噴き出した。


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