古本屋の店主は、目を見開いたまま死んでいた。死因は急性心筋梗塞、享年79歳。

店主の葬儀は町内会が行ったが、喪主は不在。驚くべき事に、町内の誰も店主の本名を知らなかった。

遺骨は町内の寺に預けられ、家族が見付かり次第引き取ってもらう事になった。



しかし不思議な事に、あの日から既に1週間以上経つが、自らの生命を使ってまで最後のメールを送信したにも関わらず、何かが起きているという噂話すら耳にする事がない。

一体、店主は何をしたのだろうか…


失敗したのか?


いや…
あの店主が失敗するなど、まず考えられない。

となれば、私の知らないどこかで、何かがその時を待っているのかも知れない――


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