「春望……って、杜甫の?」
「そうよ。
坂口さんが金山 タズコさんに店主の手紙を渡した時、『家書 万金に抵る』と言った事を覚えていたでしょ?
あれは、家族からの手紙は、どんなものよりも嬉しいという意味。
だけど、他に例える作品は色々とあるけど、その中から春望から引用したという事は、春望が好きだったという事でしょ。
それに、坂口さんが持っていた手紙には…
『いつも言っている様に戦争は良くない事だけど、人を思いやる気持ちがあれば、終わった時には今よりももっと良い世の中になる。
それと同じ様に、人に裏切られても騙されても、人を愛する気持ちを忘れなければ、人は今よりももっと他人に優しくなれるの』
これは、杜甫の思想そのもの。時代背景が第二次世界大戦中だという事を考えれば、店主が幼い頃から春望を聞かせていた可能性は高いでしょ」
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