店主は占いサイトの1つが削除される瞬間を見た後、1歩2歩と私達の方に近付いてきた。
「なぜだ…
なぜパスワードが、お前に分かったのだ」
私は立ち上がると、店主の方を向いて言った。
「好きな歌…
このパスワードに、危うく私は騙されるところだった。
でも、朝比奈さんに会った時、あの人は私にこう言った。
『好きな歌謡曲は無い筈だ』と。
それから私は、ずっと歌謡曲以外の歌を考えていたのよ。
日本で言えば、和歌というものが存在するし、詩も『うた』だ。
そうなれば、当然漢詩も『うた』ではないだろうか?と。
後は、一体何という作品のタイトルが、パスワードになっているかという事だけ…
でもそれは、坂口さんの話と、その手紙の内容が解決してくれたのよ」
「千里、パスワードは何て入力したの?」
「春望――…」
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