愛美が背後から、私の服を掴んだ。
私は振り返ると、愛美に精一杯微笑んだ。
パスワードには、私なりに自信はある。いや、これしかないと思っている。
だけど、生死の選択は簡単なものではない。
指先の震えは徐々に激しくなり、全身に汗が滲んでいた。
「出来ないのか?
そうだろう…
人間は、自分さえ良ければそれで満足するのだ。
わざわざ自分の生命の危険を犯してまで、他人の為に尽くす必要などない。
お前が間違っている訳ではない。人間とは、そういう生き物なのだ。
狡猾なだけの、卑劣で醜い生き物だ。信頼だの愛だの、全ては人間が己の脆弱さを誤魔化す為に作り出した、詭弁に過ぎないのだ!!」
私は店主の話を聞きながら、首を横に振り文字を入力した。
漢字2文字。
それが私の答えだ――
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