私の声が闇に溶け込むと同時に、足元を冷気が表のシャッターの方向に流れ始めた。
そして突然全身に鳥肌が立ち、息苦しくなる程の霊気が周囲に立ち込めた。
「私の名前までは、調べる事が出来たのかい…」
室内に店主の声が響き、正面のシャッター側が薄暗く光り始めた。
「ここに来たという事は、決意したという事だな…
つまり、まずはお前が生け贄になるという事だ!!」
薄暗い光は徐々に人形になり、輪郭や色が生前の店主の姿になっていった。
完全に店主の姿になると、私達を睨み付けて言った。
「見届けてやるから、早くパスワードを入力してみるが良い」
「待って。
その前に、貴女に渡さなければならないものがある。
それを渡してからよ」
私はポケットから英二郎の妻から預かった封筒を取り出すと、店主に近付いて渡した。
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