三春駅前に到着し、近くの駐車場に車を停めると、19時を過ぎていた。
時間は、十分に残っている。後はあの店主の目の前で、パスワードを入力するだけだ。
私達は直ぐに、古本屋に向かった。
私の勘が正しければ、店主は私達が古本屋に来る事を予期し、待ち構えているに違いない。
古本屋の前に辿り着くと、愛美が抱き付いてきた。
そして強く抱き締めながら、声を震わせながら呟いた。
「大丈夫だよね?
もし千里に、何かあったら私…
やっぱり、私がパスワードを入力する。元々、千里は関係ないんだし」
私は愛美をゆっくり引き離すと、出来る限りの笑顔を作った。
「大丈夫。私が思い付いた歌で、間違いないよ。
さあ、行こう!!」
強がってみても、やはり身体は正直で、なかなか最初の1歩が踏み出せない。
建物の横をすり抜ける愛美の背中を見て、ようやく歩き始める事が出来た。
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