車に乗り込み、一先ず三春市に戻る事にした私達は、境界の峠を越えていた。

既に18時を過ぎ、ライトを点灯しなければ、運転出来ない様な状態だった。


それよりも、明確な情報が無いまま放送時間が近付いている事に、愛美はかなり焦っている様だった。

それを示す様に、すっかり口数が減っていた。


私は意外にも冷静で、坂口 英二郎さんの話を思い出しながら、ある結論に辿り着こうとしていた。

自信があるかと問われれば、絶対とは到底言えないが、私にはそれしか思い付かなかったのだ。


「愛美、あの古本屋に行ってくれない?」

私の言葉に、ずっと黙り込んでいた愛美が尋ねた。

「何であんな所に、わざわざ行くの?」


「うん…
手紙の事もあるけど、パスワードの入力は、あの古本屋でしたいから」

「分かった」

愛美は一度帰宅しようとしていたが、進路を変え三春駅を目指した。


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