せめて、まだ幼い娘さんの方は助けたいと考えた夫は、処刑した事にして、友人である三春市の古本屋の元に逃がしました。
幸いな事に、検分は金山さんのみで済み、娘さんを逃がした事は誰にも知られる事はなかったのです。
ただ…
その年の暮れには、友人の古本屋店主は亡くなり、娘さんと連絡が取れなくなりました」
「その古本屋というのは、三春駅前にあったのではないですか?」
「私はよく知りませんが、そんな場所ではないと思いますよ。
それならば、音信不通になり、これを届ける事が出来なくなる筈がありませんから」
英二郎さんの妻は、そう言って茶色い封筒を取り出した。
「それは、何ですか?」
愛美が尋ねると、私達の方に差し出して答えた。
「これは処刑の前日に、金山さんが娘さんに宛てて書いた手紙です」
「え――?」
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