私達は玄関から入ってすぐ左側にある、畳敷きの8畳に通された。
障子で仕切られた空間の中央には長方形の机が置いてあり、客間になっている様だった。
「どうぞ…」
お茶を出された私達は、老女に頭を下げた。
坂口 英二郎さんの、妻なのだろうか?
「英二郎さんは、外出中ですか?」
私が尋ねると、70歳後半と思われる白髪の老女は、首を横に振った。
「いえ、夫の英二郎は、5年前に他界しました」
他界…
既に亡くなっているという事は、もう話も聞けない。
私達は言葉を失い、思わず俯いてしまった。
「貴女達は、第二次世界大戦中にあった、暗殺計画の事について聞きたいのでしょう?
それなら、夫から何度も聞かされているので、よく知っていますよ」
「ほ、本当ですか?」
坂口さんの妻は、私達が聞きたかった事を、話し始めた――
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