改札から出た所で、先に歩いていた愛美が振り返った。
「車出すから、私の家に来る?」
「うん。車があった方が動きやすいし、そうしてもらえると助かるよ」
私達は一度愛美の自宅に戻り、そこから車で移動する事にした。
実際、中井川市は交通の便が余り良いとは言えず、駅に着いたとしても、移動はまたタクシーになってしまう可能性が高いのだ。
愛美の自宅に着くと、直ぐに車で出発した。
坂口 英二郎さんの自宅は、三春市と中井川市の境界にある低い山を越えてすぐの集落にある。
あの辺りは時々通り過ぎる事があるが、西向きの斜面に民家が点在する農村地域だ。
「ナビがあるから、迷わずに行けるけどさ、本人がいれば良いけど」
運転しながら愛美が言った。
「うん。
今まで上手くいき過ぎてるし、何か嫌な予感はするけど…」
.



