私の携帯電話を覗き込んでいた愛美が、内容を確認して言った。
「今から行くんでしょ?
松本市って、どこにあるか知らないけど」
「私も知らない…ははは。
とりあえず、新幹線で長野駅まで行けば、分かるでしょ」
私も愛美も松本市がどこにあるのかも分からなかったが、とりあえず北陸新幹線に乗り込み、長野駅を目指した。
私は新幹線の車窓から外を眺めながら、朝比奈さんの話を思い出していた。
店主の母親が、軍に殺されていたなんて…
逆恨みして現在の人達を死に追いやる事は、当然許される事ではないが、もし自分が店主だったとすれば、どうだっただろうか?
今までは一方的に悪人だと決め付けていたが、私の心に同情と僅かな共感が生まれていた。
悪いのは店主だけではなく、人間そのものが持つエゴなのではないだろうか…
.



