11時過ぎに、私達は何度も頭を下げて、朝比奈さんの御宅を後にした。
朝比奈さんに会うという目的は果たしたが、肝心の歌の情報は無く足取りは重かった。
「とりあえず、タクシー拾って東京駅に戻ろうか?」
「うん…」
私達はタクシーが通りそうな、大きい道を目指して歩き始めた。
その時――
「千里、電話鳴ってるよ」
絶望感を背負い力無く歩いていた私は、電話にも気付いていなかった。
ポケットから携帯電話を取り出して確認するが、見た事もない電話番号だった。
しかも電話番号からすると、相手は東京にいる様だった。
「はい…」
「もしもし里川さんですか?
東都テレビの坪島と申しますが――」
ああ、あの時の番組スタッフ…
「はい、そうですけど」
この不意にかかってきた電話により、失意の底にいた私に希望の光が射す事になる…
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