朝比奈さんの言葉は、何となく意味が分かった。
自分の愛すべきものを、理由はどうあれ汚してしまいたくはない。
だからこそ…
「チズ子さんの母親であるタズコさんは、軍に連行され強制的に文章を書かされそうになりましたが、それを拒みました。
それで軍は、タズコさんの一人娘であるチズ子さんを人質にし、タズコさんに暗殺文を無理矢理書かせたのです。
しかし…
その時強制的に書かされた文章には全く韻は含まれておらず、効果はありませんでした。
それで、怒った軍により、タズコさんは戦犯として処刑されたのです」
「酷い…」
「だから、チズ子さんは自分の母親を殺した旧日本軍を恨み、日本人そのものを恨み、復讐しようとしていたのです。
私も話を聞いた時には、まさか本気で実行しようとしているとは思わず、黙って聞いているだけでした…」
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