断罪者


「チズ子さんと初めて出会ったのは、今から約40年前、漢詩大会の授賞式での事でした。

授賞式で年齢が近かった事もあり、意気投合した私達は親しく交流する様になりました。

おそらく、チズ子さんが心を許して付き合っていたのは、私だけだと思います。


ある日…初めて出会って10年くらい経ってからでしょうか、ひょんな事から御互いの両親の話になった時の事です。

私の両親が第二次世界大戦で戦死した事を告げると、チズ子さんは言いました。

『私の父親は南海の孤島で戦死し、母は旧日本軍に殺された』と…」


「日本軍って、身内に殺害されたという事ですよね…
なぜなんですか?」


朝比奈さんは目の前のお茶を一口飲むと、更に話を続けた。

「貴女の感じた様に、私も同じ事を思い、チズ子さんに尋ねました。

すると、チズ子さんはそれまで見た事もない様な険しい表情で、話してくれました。


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