余りにも広い敷地と豪邸に、私達は門の前でチャイムを鳴らす事を躊躇した。
しかし、こんな所まで来て、今更怖じ気付いても仕方がない。
「お、押すよ」
私は愛美に宣言すると、目の前にあるボタンを押した。
電子音が鳴り、当たり前の様に設置されている防犯カメラの前で、応答を待った。
「はい…」
10秒程して、インターフォンから声が聞こえた。柔らかい声は、年配の女性のものだった。
「あの、朝比奈 節子様のお宅ですか?
私達、三春市から来た者なのですが、金山チズ子さんの件でお話があるのですが…」
「チズ子さんの…
どうぞ、お入りになって下さい」
その返事と共に、目の前にある鉄製の門が自動で開いた。
「すご…」
「行くよ、愛美」
「あ、うん」
私達は門を潜ると、石畳を20メートル程歩いて玄関に向かった。
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