「この近所だと思うから、後は自分達で探して下さいね」
そう運転手は言い残すと、タクシーは走り去っていった。
電柱に貼られたプレートを見ると、確かにすぐ近くに朝比奈 節子さんの自宅はある様だった。
私達は周囲にある住宅を、1件ずつ覗き込んでは表札を確認した。
閑静な住宅地は、どの家も高い塀に囲まれ、建物も私達庶民が住む住居の2倍から3倍の大きさがあった。
こんな家に住む様な人が、見ず知らずの私達に会ってくれるのだろうか…
少し不安になり立ち止まった時に、少し前を歩いていた愛美の声がした。
「千里、朝比奈って家があったよ」
急いで駆け寄ると、レンガ造りの塀に、朝比奈というプレートが嵌め込まれていた。
濃い緑色の門から見える建物は、瓦葺の日本家屋でありながら、外壁や庭はモダンな現代風の造りだった。
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