断罪者


一先ず私達は、私の自宅に戻る事にした。

今日のところは、もうこれ以上の情報を入手する事は、難しいと判断したのだ。


山を下りながら、私は事務所の男性に手渡された電報を開いた。

無地の簡素な表紙に、内容も既成の文面が書いてあるだけのものだった。

それにしても、急性心筋梗塞で亡くなった…しかも身寄りがない店主に、一体誰が電報を打ったのだろう?


「朝比奈 節子…か」

「誰、その人?」

思わず口にした差出人の名前に、愛美が運転しながら反応した。


「うん、さっき渡された電報の差出人。一体誰なんだろうね?

だって、電報が届いてるって事は、死んだ事を知ってるんだよ。

でも…
この人の住所、東京なんだよね」


そう――

東京在住の人が葬儀の事を知っているということは、店主自身が教えなければ、分かる筈がないのだ。


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