両側から木が覆い被さる様な道の先に、周囲を金網で囲まれた黒灰色の四角い建物が見えてきた。
ここに来るのは、祖母が亡くなって以来だから、もう10年振りだ。
門を潜ると正面に建物があり、すぐ左側が駐車場になっていた。
私達は駐車場に入り車から降りると、建物に向かった。
多分、入口付近に事務室がある筈だ。
石階段を5段程上がると、ガラスの自動ドアがあった。
私達は建物の中に入ると、火葬場の事務所を探した。
「千里、あれじゃない?」
愛美が指差す方を見ると、黒い作業服を着た人達が出入りしている部屋があった。
「行ってみよう」
10メートル程奥に入った場所にあるその部屋の前に行くと、「事務所」という札が貼られていた。
間違いない。
私は手の甲で扉をノックすると、ゆっくりと開けた。
「失礼します――」
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