周囲に気を配りながら、誰にも見付かる事もなく古本屋から出た私達は、愛美の車の中にいた。
しかし、2人共考え込んでしまい、無言だった。
チャンスは1回、しかも失敗が即死に繋がるとなれば当然だ。
緊迫した空気の中、不意に愛美が口を開いた。
「どっちにしても、もう少し情報を集めた方が良いんじゃないかな?」
「それはそうだけど、これ以上の情報なんて…」
「そうだけど、ここでじっとしていても仕方ないし…
まだ、あの人の本名すら知らない訳だから」
確かに…
ここで悩んでいても、何の解決にもならない。情報を探していれば、何かヒントが見付かる可能性もある。
「じゃあ、まず本名を調べよう。本名すら分からなければ、何も調べる事が出来ないし」
「うん。
本名…どこに行けば、分かるのかな?
今日は市役所は休みだし」
.



