「帰ろう」

「うん…」

私は沙菜に促され、席を立った。そして、足早に帰宅する生徒達の波に紛れた。


1階には教師が数人待機していて、生徒達を裏門へと誘導していた。

表が現場になっている事もあり、生徒達に余計な動揺を与えない様にする意図があったのだろう。

私達も幅が3メートル程しかない裏門から、吐き出される様にして外に出た。


私には前原やもう1人の考えている事を知るべくもないが、1日に2人…しかも学校で飛び下り自殺をするなんて、有り得ない。

所々窪んだアスファルトを見詰めながら、私は人波に身を任せて歩いていた。


「知花、ファーストフードにでも寄って帰ろうか?」

「うん、そうだね」

寄り道する様な気分にはなれなかったが、帰宅して1人になるよりは、少しでも誰かと一緒にいたかった。

多分、沙菜も同じ気持ちなのだろう…


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