厳しい視線にたじろぎながらも、私は町内会長に尋ねた。
「先日亡くなられた、古本屋のお婆さんの事について、少し聞きたい事があるんですけど…」
「何をだね?」
排他的な目が、更に険しくなった。
「生前、大変御世話になったので、好きな歌でも御供えしようと思いまして…
どんな歌が好きだったのか、御存知ないかと」
「何で歌なんかを…」
「私達、楽器を多少演奏するので、録音して御供えしようと思ってるんです」
愛美が動揺する私に代わり、口を挟んだ。
町内会長は私達の話を聞き、黙り込んでしまった。
さすがに設定に無理があり、すっかり疑われてしまったのかと思ったが、町内会長が口を開いた。
「う―む…
思い出してみても、あの人が歌を聴いている場面など思い出せないな。
カラオケをする訳でもなかったし、宴会に出席する事もなかったしな」
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