「あの、歌とか…
好きな歌とかは、御存知ではないですか?」
私の問いに、住職は少し俯き気味に答えた。
「私は時折ここでお話しをする程度でしたので、そのような事は聞いた事がありません」
「そうですか…」
新しい情報は入手出来たものの、直接解決に繋がるものは無かった。
しかし、落胆した私達に、住職は言った。
「もしかすると…
懇意にされていた町内会長なら、何か御存知かも知れませんよ」
「町内会長…
それは、どなたがされているんですか?」
私達は住職に何度も頭を下げ、禅福寺を後にした。
住職の話では、あの古本屋の近くにある金物屋の御主人が、町内会長をしているという事だった。
近所という事もあり、古本屋の鍵も町内会長である御主人が管理しているらしい。
私達は早速、その金物屋に行く事にした。
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