断罪者


確か店主は、引き取る身寄りが無く、この寺に預けられたと聞いたのに…


住職はそのまま墓地に入ると、幅が1メートル程の通路を通って奥へと進んで行った。

そして墓地の中心部を少し過ぎた辺りで立ち止まり、雨風ですっかり古くなった墓に手を合わせた。

「これが、あの片の墓です」


え…墓?
身寄りが無いのに、墓がある?

しかも見た感じ、最近立てられた様な墓ではなく、既に何十年も経っている様だ。

「これは一体…」


住職は手を合わせた後、墓石を眺めながら話し始めた。

「この墓は、もう30年以上前に、あの方に依頼されて立てたものです。

母親の墓が無いというので、遺骨や遺品は無かったのですが、どうしても立てたいと申されまして。

それから毎日、朝早くに御参りになってました。


ですから、あの方の遺骨は、既にこちらに納めてあります」

「そうなんですか…」


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