突然の出来事に一瞬言葉に詰まったが、直ぐに気を取り直した。
「ふ、古本屋の店主の遺骨がこちらにあると聞いて、御参りに来たんですが」
小柄な目の細い住職は、穏やかな表情のまま階段を下り、下駄を履いて私達の所まで歩いてきた。
そして、意外な事を口にした。
「お預かりしている…という訳ではないのですよ。
まあ、こちらに」
預かっている訳ではない?
意味がよく分からなかったが、言われるまま私達は住職の後について行った。
住職は本堂の横に進むと、壁に沿って裏側へと回った。
本堂の裏は表側よりも広く、本堂の2倍程の面積があり、小規模の霊園になっていた。
おそらく、この地区に住む門徒の墓地になっているのだろう。
しかし、墓地に一体何の用事があるというのだろうか…
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