「それは――
私達、あの人には凄く御世話になっていてたんですけど、葬式にも行けなくて…
せめて霊前に、好きだった歌でも捧げようかと思いまして」
古物屋の店主は私の適当な話に納得した様子で、頷いた後で話を始めた。
「そうかい、そうかい。
あの人が好きだった曲ねえ…
昭和30年代から50年代の曲なら、何でも好きだったよ。
美空ひばりなんか、特に好きだった様な気がするなあ」
昭和30年代から50年代って…美空ひばりの曲だけでも、膨大な数だ。
「あ、あの…
特に好きだった曲とかは、何かなかったんですか?」
「ん…特に好きな曲?
それは、余り記憶にないなあ。あの頃の曲なら、どれでも喜ぶと思うがね」
「は…い」
駄目だ…
これでは、曲を絞り込む事など不可能だ。
他に、あの店主と親しかった人物はいないのだろうか?
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