その時――
10メートル程先にある踏切りに赤い警告灯が点灯し、警報器が鳴り始めた。
何てタイミングが悪く電車が…
ハッとして振り向くと、愛美が蹲り見ただけで直ぐに分かる程、全身が激しく震えていた。
私は警報器が鳴り響く中、愛美を強く抱き締めた。
「大丈夫、大丈夫だから…」
いくら強がっても、愛美の記憶からあの事故の事が消えることはない。
巻き込まれた人達も同じ様に、ずっと忌まわしい記憶を引き摺って生きていかなければならないんだ。
もう、全てを終わらせなければならない。二度と、こんな不幸な出来事が起きない様に――
電車が通り過ぎ、警報器が鳴り止んだ。
「千里…ありがとう、もう大丈夫だから。
行こう」
愛美はそう言って立ち上がると、古物屋に向かって歩き始めた。
私も直ぐに、愛美の後を追った。
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