「ねえ愛美…
よく考えたら私達、あの店主の名前すら知らないんだよね」
「確かに…」
「そんな状態で、好きな歌なんか分かる筈がないよね。
やっぱりここは、近所とか商店街の人達に、聞いてみるしかないんじゃない?
もしかしたら、誰か知ってるかも知れないし…」
「うん」
あの店主が何者なのか分からなければ、実際どうする事も出来ない。
店主の市が行った葬儀に参列した人達に、1人ずつ聞き取りをする以外に方法はなかった。
それともう1つ、あの古本屋に忍び込む事だ。
店主に身内がいなかったのか、それとも連絡が届いていないのかは分からないが、古本屋はあの時のまま、シャッターが下ろされているだけだ。
ただ、占いサイトを準備していた事を考えれば、手掛かりになる様な物が残されているとは思えないが…
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