真っ赤になったまま、なかなかひかない頬の熱。

それを見て、慶介は何度も肩を震わせて笑う。



「…ククク。 ほんと…可愛いよ……葵は」

「……ど、どうゆう意味?」



チラリとこっちを見ては、また口元を覆って笑いを堪える慶介は、どう見てもあたしを子供扱いしてる。


もぉ! 
子供だと思って!!
……あたし、気にしすぎ?





でも。
なんだか。



『葵』って呼ばれることに胸がドキって反応する。



昨日の影響なのかな……
そう思うと、また甦る記憶。

ボボボボ!!!


「…ぶッ! 青くなったり赤くなったり…ほんと、忙しいやつ」


「……ぅ。 だ、だってぇ」



首を傾げてあたしを覗き込んだ慶介。

目が合うたびにトクンと胸が弾む。



ほんと、あたしって忙しい。








ひとしきり笑われたあたしは、ちょっとだけ唇を尖らせてロビーに来ていた。

最終日の今日は、時間がない。
午前中の便で、日本へ発つんだ。


残り少なくなった時間を、あたし達はホテルのロビーにあるカフェでゆっくりする事にしていた。
 

このカフェは、一面鏡張りになっていて、ホテルの前に広がるワイキキビーチ。
さらにはその先に見えるダイアモンドヘッドが一望出きた。

カフェのいたる所には、本物の植物達が植えられていて、小さな噴水まであった。

まるで今にも鳥の囀りが聞こえてきそうな、森の中にいるような感覚にさえなる、そんな凝った店の造りに、あたしはちょっとだけ興奮気味だった。